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懲戒解雇と退職金不支給・減額はどこまで認められるか

労働問題

労働問題

懲戒解雇と退職金不支給・減額はどこまで認められるか

東 浩作

東 浩作

弁護士

懲戒解雇となった場合、退職金を不支給または減額とする旨の条項が就業規則や退職金規程に定められていることが多くあります。このような条項は、一般的には有効とされることが多いものの、実際にどこまで適用できるのかについては、裁判例上、厳格な判断がなされています。

1. 懲戒解雇と退職金の基本的な考え方

退職金は、賃金の後払い的性格を有し、労働基準法上も賃金に該当すると解されています。そのため、懲戒解雇の場合であっても、直ちに退職金を不支給又は大幅に減額できるわけではありません。

裁判例は、退職金不支給・減額条項が適用されるのは、「労働者の勤労の功を抹消ないし減殺してしまうほどの、著しく信義に反する行為」があった場合に限られるとして、限定的に解釈しています。その結果、一般論としては、懲戒解雇事由よりも、退職金不支給・減額が認められるための要件の方が、さらに厳しいとされています。

2. 裁判例にみる類型別判断

(1) 会社財産の横領事案

東京地裁平成21年9月3日判決では、4000万円を超える会社財産の横領および隠蔽行為が認定され、退職金全額不支給が有効と判断されました。企業秩序に与える影響の重大性が強く考慮されています。

(2) 競業避止義務違反事案

東京地裁平成20年3月28日判決では、退職金不支給規程自体は有効としつつも、退職金請求権を全て失わせるほどの背信性や悪質性は認められないとして、退職金全額の支払いが認められました。

(3) 職場内での違法行為

    • 東京地裁平成24年2月17日判決では、支店長代理が職場の立場を利用し、酩酊状態のパート社員に対して性行為を行った事案につき、退職金全額不支給を有効と判断しました。
    • 東京地裁平成20年2月15日判決では、職場内の賭博行為に関与した事案につき、職場の不正行為を助長する強い誘因となった点を重視し、退職金全額不支給を有効としています。

(4) 私生活上の犯罪行為

私生活上の行為であっても、企業や職務内容との関連性が強い場合には、退職金の減額が認められることがあります。
    • 電車内での痴漢行為により有罪判決を受けた事案では、退職金が7割減額されました。
    • 強制わいせつ事件で有罪となり、報道がなされた事案では、同じく退職金7割減額が認められています。
    • 業務外の飲酒運転で実名報道された事案では、退職金が5割減額されました。

3. 実務上のポイント

懲戒解雇が有効である場合であっても、退職金の不支給や大幅な減額が常に認められるわけではありません。行為の悪質性、業務との関連性、企業秩序への影響、社会的評価などを総合的に検討する必要があります。
まとめ
    • 懲戒解雇=退職金不支給とは限らない
    • 退職金は賃金の後払い的性格を有し、厳格に保護される
    • 不支給・大幅減額が認められるのは、著しい背信行為がある場合に限られる
懲戒処分や退職金の取り扱いは、企業・労働者双方にとって影響が大きい問題です。個別事案に応じた適切な判断のためには、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

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