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カスタマーハラスメントへの対応

企業法務

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カスタマーハラスメントへの対応

両角 駿

両角 駿

弁護士

近年、エスカレートするクレームによって担当者が疲弊してしまう「カスタマーハラスメント」(以下「カスハラ」といいます。)が社会問題となっていることから、厚生労働省の制定するパワハラ指針において、カスハラに関する下りが設けられ、厚生労働省よりカスハラ対策企業マニュアルが公表されました。

このマニュアルにおいて、カスハラとは、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」とされています。そもそも要求事項が不当なものである場合にカスハラとなることは当然ですが、契約上の正当な要求であったとしても、その手段・態様・対応状況によっては、カスハラに該当することもあり得ます。

1. クレーマー側が違法となる場合

カスハラ行為によってお店側に損害が生じた場合には、クレーマー自身の不法行為として損害賠償責任の原因となり得ることは当然であり、場合によってはカスハラ行為が刑法犯に該当する場合があります。

例えば、長時間にわたり飲食店で不穏当な態様で飲食した場合には、威力業務妨害罪に該当する可能性がありますし、無言電話や迷惑電話等が偽計業務妨害罪に該当する場合もあります。そのほかにも、脅迫罪、強要罪、暴行罪、傷害罪、名誉棄損罪、侮辱罪、信用棄損罪、住居侵入罪等の刑法犯が成立する可能性があります。

損害賠償請求が認められた事案として、マンション管理会社に対し、半日の間に47回電話をかけ、クレームを繰り返し流言したカスハラ行為について、不法行為による信用棄損の損害額を200万円、クレーム対応による損害額を10万円として、損害賠償請求を認めた裁判例があります。

2. 使用者側が違法となる場合

カスハラにより担当者が精神的に追い詰められ、精神疾患を発症した場合には、使用者の安全配慮義務違反等として、使用者が損害賠償責任を負うおそれがあります。

実際の裁判例として、クレーム対応により労働者が休日・時間外作業等に追われ、うつ病を発症した事案において、使用者側に1300万円の損害賠償責任が認められています。

3. 使用者の対応が適法と評価された裁判例

一方で、使用者に対する損害賠償請求が行われた裁判において、裁判所が使用者側の対応を評価し、安全配慮義務違反を認めなかった裁判例もあります。

裁判所は、以下の①〜④の点を評価しました。

  • クレーマーへの対応について、使用者が入社時テキストを配布して指導していたこと
  • サポートデスクを設置し、担当者からの相談を受ける体制が整っていたこと
  • 深夜の営業時には、必ず従業員を2名以上配置していたこと
  • 使用者がクレーマーとのトラブルを終息させるための施策を講じ、順次実施していたこと
裁判所は、これらの点を踏まえ、使用者は尽くすべき義務を尽くしていたとして、不法行為責任を負わないと判断しました。もっとも、今日においては、パワハラ指針等により、使用者が実施すべき対応がある程度明確化されています。そのため、これらに従っていない場合には、違法との評価を受けやすい点には注意が必要です。

4. SNS投稿等への対応

クレーマーが従業員を撮影する行為については、個人には肖像権という権利が認められており、顧客との関係においても、従業員が肖像権を放棄しているわけではありません。

そのため、クレーマーがクレーム対応を撮影していることを理由として、その後のクレーム対応を拒否することも可能です。

また、既にSNSに動画等がアップロードされてしまった場合には、肖像権侵害や名誉棄損による不法行為に基づく損害賠償請求を行う、プロバイダに対して動画等の削除を求める、名誉棄損罪等として警察の対応を求めるといった対応が考えられます。

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