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従業員に対する求償

企業法務

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従業員に対する求償

東 浩作

東 浩作

弁護士

会社の従業員が不祥事(例えば、業務中の交通事故、飲酒運転事故、セクハラ行為など)を起こした場合、会社が被害者に対して損害賠償金を支払うことがあります。このような場合、会社は、加害者である従業員に対して、支払った賠償金の負担を求めること(いわゆる「求償」)ができるのでしょうか。

1. 会社は従業員に対して求償できるのか

従業員の不法行為によって第三者に損害が生じた場合、会社がその損害を賠償する責任を負う制度を「使用者責任」といいます(民法715条)。同条は、使用者が被害者に賠償した後、加害者である従業員に対して求償することを予定しています。そのため、制度上、会社が従業員に対して求償すること自体は認められています。

2. 常に全額の求償が認められるわけではない

もっとも、裁判例は、会社が支払った賠償金の全額について、当然に従業員へ請求できるとは考えていません。会社は、従業員を使用して事業活動を行い、その利益を享受している以上、業務に関連して生じた損害については、会社側も一定の負担をすべきであるという考え方がとられています。そのため、求償は信義則上相当と認められる範囲に制限されることがあります。

3. 求償割合の目安

どの程度の割合で求償できるかは、事案ごとの事情によって判断されます。例えば、
    • 不祥事の内容や悪質性(飲酒運転、故意性の有無など)
    • 会社が事故防止や再発防止のための体制・指導を行っていたか
といった点が考慮されます。裁判例をみると、求償割合は概ね「3割前後」とされるケースが多いとされています。

4. 全額請求が認められる可能性がある場合

もっとも、不祥事の内容が極めて悪質である場合や、会社側が十分な予防策・指導を行っていたにもかかわらず発生した場合などには、従業員に対して賠償金の全額負担を求めることが認められる可能性もあります。

5. 実務上の注意点

従業員の不祥事が発生した場合、被害者への対応だけでなく、社内的に「従業員へどこまで負担を求めるのか」という判断も重要になります。一般的な目安は存在するものの、個別事情によって結論が大きく異なるため、慎重な検討が必要です。
まとめ
    • 会社は従業員に対して求償することができる
    • ただし、全額が当然に認められるわけではなく、信義則上相当な範囲に制限されることがある
    • 裁判例上の目安は「3割前後」だが、悪質性や会社の予防策によっては全額請求が認められる場合もある
従業員に対する求償を検討する際には、社内規程の整備状況や事故防止のための取り組みなども重要な判断要素となります。具体的な事案については、弁護士に相談のうえで対応方針を検討することをおすすめします。

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